アオゾラをカナデヨ
静かになると、雨の音が響く

不思議……沈黙が苦じゃないなんて。やっぱり、今までの好きな人とは違う。同じようにドキドキするけれど、極度の緊張感や不安はない。

「……なあ、今日一緒に帰らないか?」

「へっ⁈」

沈黙を破った安斉くんの口からは、思いもよらない言葉が飛び出し、変な声が出てしまった。

びっくりして振り向くと、安斉くんは照れて珍しく目をそらす。

ふふ、意外と照れ屋だな。

「……うん、いいよ」

そんな、少し頬を染めた君を見ていると、今日が雨だなんて忘れてしまう。

「うん、じゃ後でな」

散らばっていた思いが暖かい場所にホワッと集まってくる、そんな笑顔だ。

『一緒に帰らないか』

頭にこだまするフレーズに心は晴れ渡る。

香子のことや安斉くんの片思いの相手が気になるが、それでも私を誘ってくれた、その事実が素直に嬉しい。
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