アオゾラをカナデヨ
「さ、じゃあ最後に課題曲、通して終わりにする」

先生の言葉に全員の背中がシャキンと伸びる。

毎年春、入部希望者に最初に先生が言うことは「半端な気持ちで入ってこられると困ります。ただし、真剣にやりさえすれば、どの部活よりもやり甲斐はあることは保証する」

その言葉に一瞬怯む新入生。

でもウソでも大袈裟でもない。
半端な気持ちでは付いていけるような練習ではないけれど、その分結果は残しているし、やり甲斐はある。

〜♪〜♪

全員の本気の音が、部屋に響き渡る。

届け、みんなの音色。

届け、私の音。

「はい、お疲れさん。明日から自由曲に入るから譜読みしてくるように」

「はいっ!お疲れさまでした!」

一斉に立ち上がり、全員で声を揃える。

先生が部屋を出て行くと、2年生が一斉に手際よく楽器を片付け始める。

もうすぐ入ってくる新入部員のいいお手本になってくれるだろう。

「さ、帰ろう」

「うん」

私たちも片付けを終えて部室を出る。

ふと、今朝ホームで会ったあのパーカーの男子が頭をよぎる。

どこの学校なのかな……まあ、どうでもいいか。


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