アオゾラをカナデヨ
「ソウ!」

誰もいない薄暗い空き教室に飛び込んできたのは安斉くんだった。

「安斉くん⁈ なんで?」

急いで来てくれたのだろう。少し息を切らした安斉くんは、肩で息をしながら私の前に立つ。

なんで?部活は?

「香子に何言われた?」

今までに聞いたことのない切羽詰まった声。

「……うん。まあ、ちょっと話ししただけだよ。部活は?大丈夫なの?私も行かないと」

もう合奏が始まる時間だ。

「今、合奏の準備中に抜け出して来た。誰かが、ソウと香子がここに入って行くの見たって言ってて」

ああ、それで慌てて来てくれたんだ。香子と安斉くんが鉢合わせにならなくてよかった。

「大丈夫か?」

部活へ行こうと立ち上がった私をまた椅子に座らせ、しゃがんで視線を合わせてくれる。

そんなに優しくされたら、ダメだ。固くなっていた心が砕けてしまう。

「……うん、大丈夫」
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