アオゾラをカナデヨ
香子はあれから何も言ってこない。
次の日、香子から事情を聞いた莉子が私に謝ってきた。

「ちょっと言い過ぎだと思う」と言う莉子に、私も言い返したからと返した。

確かに香子にはツライ言葉を投げかけられたけど、すぐに安斉くんが来てくれたからか、思ったより引きずることなく過ごせている。

それでも気にならないわけではないし、時々見かける香子の姿を見ると、胸がギュッと痛む。

今はコンクールの練習に集中したいので、それが終わるまで、と言い聞かせている自分もいる。

安斉くんはあれから、必要以上に私に話しかけてはこない。香子を意識してくれているのだろう。それでも時折見せてくれる柔らかな笑顔や、優しさから気持ちは感じ取れていた。

それ以上にコンクールの練習がハードになり、恋に浮かれている余裕なんて誰にもなかった。
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