アオゾラをカナデヨ


吹奏楽コンクール地区予選の日は、朝から気持ちのよい快晴だった。

梅雨が明けてからは、一気に夏がやって来たかのように陽射しが強く照りつけていた。

雨が苦手な私にとっては、暑い方がマシだ。

コンクール用の衣装に腕を通すと、いよいよ気合いが入る。

あと何回、この衣装を着ることができるのだろうか。

控え室、一番緊張感がある初日。個人やパートごとに音合わせをし、ピッチを確認する。

「さ、時間だ行くぞ」

大きな声で手を叩きながら小沢先生が控え室へと入ってくる。

一瞬にしてピンと張り詰める空気。

思い思いに鳴らされていた音が一斉に止まる。

各々楽器を抱えて向かう舞台裏。

前の学校の出番が終わり薄暗くなった舞台。譜面台と椅子の位置を確認しながら、一番後ろのトランペットの席に目をやる。

同じく準備をする安斉くんと、一瞬重なる視線と笑顔。

よし、大丈夫。

会場には一平も香子も来ているはずだ。精一杯の練習の成果をみんなに届けたい。

学校紹介と共に明るくなる舞台。

深く、丁寧に深呼吸。

さあ、いざ全国大会へーー。
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