アオゾラをカナデヨ
あの男の子が、まさかの転校生?まさかの吹奏楽部?

いや、別に私がうろたえる理由なんてないんだ。どこに視線を合わせていいのか分からなくなる。

「附属の四校からきました、3年の安斉 ユウタです。トランペットやってます、よろしくお願いします」

先生の横に姿勢良く立つ彼。


アンザイ ユウターー


あの時の意地悪な言葉と同じ低い声が、静まり返ったホールに響く。

トランペットかぁ、うん似合うかも、なんてペコリとお辞儀をした彼を見ていると。

ーーえっ?

お辞儀の顔を上げた彼が私の方を見て薄く微笑んだ気がした。ほんの一瞬、重なり合う目線。
いや、まさか私のこと覚えてるわけないよね。気のせいだ気のせいだ。

だって、あんな一瞬の些細な出来事だもん。こんなチビを転ぶのから助けたことなんて、きっと記憶になんて残ってやしない。

私はチビって言われて腹が立たから覚えているだけだ。
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