アオゾラをカナデヨ


ガラッと開けた、誰もいない楽器室のドア。湿った空気は廊下より少し冷んやりとしているようだ。

すでに昨日のうちに大きな楽器は運搬用トラックに積み込んだため、ガラリとしている部屋はなんだか寂しい。

小さな楽器の入っている、茶色の戸棚に手を伸ばし、いつもの位置に置かれている自分の楽器を取り出す。

慣れた手つきでピッコロを組み立て、深呼吸を、ひとつ。

〜♪〜♪

自由曲、ソロの部分を吹く。まだピッチが合っていないが、響きはまずまずだ。

風を入れるため部屋の窓を開けると、そこには澄んだ青空が広がっている。

青空ーー。

もう一度、吹く。青空の、音。

全国大会への切符を手にできなければ、このメンバーで演奏するのも今日が最後になる。そう思うと全身に寒気が走り指先が震える。

大丈夫、大丈夫ーー。

自分にそう言い聞かせる。

ずっと信じてやってきた仲間がいる。やることは全てやったと言ってくれる先生がいる。
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