アオゾラをカナデヨ
「冷たいな」

「もしかしたら、このメンバーで演奏するの今日で最後かも……なんて思ったら緊張してきた」

大人な安斉くんには、素直に甘えたい。キュッと大きな手を握り返す。

「はは、大丈夫だよ。どんだけ練習したと思ってるんだ、オレたち」

明るい声を出してくれる。

「うん、確かに。鬼のような練習を、毎日何時間もね」

ふふっと笑う私を見て安心したのか、手を離そうとする安斉くんの手を少し強く握って止める。

「ソウ?」

また心配顔で覗き込む安斉くんを笑顔で見上げ、私は言った。

「昨日、香子と話したよ」
「そっか……」

「もう、大丈夫」
「うん」

もう、余計な言葉はいらなかった。繋がれた暖かい手から伝わる気持ち。

「今日、終わったらゆっくり話そう。いや、明日かな」

「うん、分かった」

安斉くんがそう言った時、廊下から何人かの部員たちの声が聞こえてきた。

「あいつら、はえーな。もっとゆっくり来たらいいのに」

「あはは、だね……安斉くん、ありがとうね」

また、助けてくれた。

「おう、オレのカイロは最強だからな!楽しんでいこう!」

そう言って、ガラリとドアを開けてタイヨウの笑顔を見せる。

「うん!」

タイヨウの音、アオゾラの音。一緒に響かせよう。
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