アオゾラをカナデヨ


「みんな、自分の気持ちにまっすぐに頑張ってきた。必ず、最高の演奏ができる。自分と仲間を信じて、楽しんでいこう!」

野沢先生の言葉で、円陣を組む手に力が入る。

「楽しんでいこう!」
「おーっ‼︎」

さあ、舞台へーー。

私は、本当に吹奏楽が好きだ。ソロ演奏では伝えられない、得られない物がある。

私の音が、みんなの音と重なり一体感を持つ。その感覚を楽しみながら吹く。

もう冷たくない手は、自信に溢れている。

薄暗い舞台の上。この時から、もう審査は始まっているんだ。

譜面台と椅子の位置を調整しながら、一番後ろの席に目をやる。

交わされた視線と笑顔は、2人だけのいつものおまじないのようだ。

よし、やってやろうぜ。そんな安斉くんの声が聞こえてきそうだった。

深く椅子に腰掛け、背筋を伸ばす。

そして視線は指揮者である小沢先生に。
< 167 / 191 >

この作品をシェア

pagetop