アオゾラをカナデヨ
「なかなかイケメンだね」

隣に座っている同じフルート担当の早元 麻美(ハヤモト アサミ)が私の耳元に囁いてくる。

「ん、そだね」

でもね、見た目はよくてもけっこう意地悪なんだよ。

ーーでもやっぱり、どこかで……。

「四校ってことは、北海道だね」
「ああ、うん」

北海道か、どこかで会ってるなんてないよね。

同じ大学の付属校同士だから、転校も簡単だったのだろう。

それから合奏の練習に入ったので、彼のことを気にかける余裕などなく、打ち込んでいた。


「まさか、彼が転校生とはね」

合奏の練習が終わり、片付けをしている安斉くんを見ながら実梨が言った。もう外は夕暮れ時だろう。

今日はなんだか集中できなかったのは、きっとアイツのせいだ。

「ね、びっくりだよね」

彼は他の男子とすでに意気投合したのか、楽しそうに話をしている。

「覚えてるかな、ソウのこと」

「いや、覚えてないでしょ。チビだし」

「あはは、気にしてんの?」

気にしてるわけじゃないけど、いい気はしない。あの出来事、私はできれば忘れたいんだけどな。
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