アオゾラをカナデヨ
駅で会った時には気づかなかったけど、吹奏楽男子にしては珍しく日に焼けた肌。

そして、持っているトランペットが少し小さく見えるような大きな手は、あの時私を助けてくれた優しい手だ。


優しい、手ーー


ほんと、イケメンだな。まあ、私には関係ないけど。そんな思いを頭から振り払いながら楽器をしまう。


「ちょっと!転校生、けっこうイケメンじゃない?」
「うん、だね〜」

なんて会話をチラッと耳にしながら楽器部屋を出る。気にしない、気にしない。

マリンバやティンパニーなどの大きな楽器は、数人がかりで運ばなければならない重労働だ。慣れているとはいえ、全ての楽器を部屋の中に運び終わる頃には外は夕焼け色に染まっていた。はぁ、これがなければ随分とラクなんだけどな。

「男子が一人増えたから、楽器運びちょっとはラクになるかなぁ」

安斉くんのことだ。

「ん〜?どうかな。ラクになるといいね」

適当に答える。

「女子がやる仕事じゃないと思うんだよね」なんて実梨はブツブツ言っている。
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