アオゾラをカナデヨ


安斉くんとは、あれから挨拶を交わす程度だった。楽器が違うとなかなか一緒になることも少ない。

それでも時折顔を合わせると、安斉くんの方から話しかけてきてくれたりする。

彼の存在が気にならないわけじゃないけれど、気さくで話しやすい、それが今の印象。

転校してきたばかりの彼は人懐こいやんちゃな性格らしく、あっという間にみんなに溶け込み、いつも彼の周りには楽しそうな笑顔が溢れていた。

明日から5月の連休に入る、部活も明日からの3日間は貴重な休みだ。


「ちょっと先帰ってて」

部活も終わり、実梨にそう告げて部室へと向かう。私は連休明けにあるスプリングコンサートのために家で練習をしようと思っていたのに、部室に楽器を置いてきてしまったのだ。

ーー 〜♪

あれ?

誰もいないはずの部室から、トランペットの音が廊下まで響いている。

誰かな?

コンクールの課題曲、トランペットがメロディの部分だ。

きれいな音ーー
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