アオゾラをカナデヨ
そんな私の戸惑いに、安斉くんは気づいていないだろうな。

「ピッコロのソロ、またソウが吹くんだな」
「ん?ソロ?」

車道を走る車の音に、安斉くんの声がかき消されてしまっていた。

「ああ、うん……レ ミゼラブル」

「うん。でも中学の時にも吹いたから、経験者ってだけだよ」

「……そうなんだ。ピッコロちっちゃいから、ソウにぴったりだよな」

また、あのヤンチャな顔で言う。
優しい顔だって、優しい声だって持ってるくせに。

「よく言われる」
「はは!否定しないんだ」

二人で笑い合う。

夕暮れ時の空には夕陽が輝き、私たちを照らして長い影を作っている。

それを見ながら歩く2人には、その影のようにまだ距離があるけれど。

駅までの道は真っ直ぐで、私の気持ちみたいにクネクネ曲がっていたりはしない。
< 27 / 191 >

この作品をシェア

pagetop