アオゾラをカナデヨ


「ただいま〜。あー、いい匂い!」

フワフワとした気持ちのまま家へ帰ると、お母さんは張り切って夕飯の支度をしていた。
筑前煮を煮立てている香りが部屋の中に漂う。

「さ、早く着替えて手伝って!いっちゃん来ちゃう」
「ああ、はいはい」

高3にもなった一平のことを、今だにいっちゃんと呼ぶ母。母はいっちゃんを、自分の息子のように思っているみたいだ。まあ、私たちが兄弟みたいなものだから当たり前だけど。

母の隣りに立ち、味噌汁の具を切り始める。私の好きなジャガイモだ。

「いっちゃん、彼女とうまくいってるの?」

お浸しのほうれん草を茹でながら母が聞く。

「うん、うまくいってるみたいだよ。たまにデートだって張り切ってるし」

「あら、そう。それならよかった」

茹で終わってザルに上げられたほうれん草から湯気が上がっている。
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