アオゾラをカナデヨ

「あなた、大丈夫？」

騒つく人だかりの中から一人の赤い傘を差した女性が話しかけてくれた。

「や……」

一平の様子を聞きたいのに声が出ない。

「あのぶつかった子と一緒にいたわよね？」

私の傘を拾ってくれながらその女性は慌てた様子で尋ねてくる。

私は黙って頷きながら傘を受け取ることしかできない。

ああ、なんて情けないんだろう。自分がイヤになる。

「一平は？」

私はやっとの思いで声をしぼり出す。自分でも驚くほどのか細い声だった。

「ああ、彼ね。腕を打ったみたいだけど、大丈夫そうよ。あなた怪我は？立てる？」

女性の言葉に少しだけ安堵した。

「あ、はい。大丈夫です。ありがとうございます」

その女性の腕を借り、なんとか立ち上がった私は人だかりの中の一平のそばへと向かう。