アオゾラをカナデヨ
「彼のご家族に連絡できますか?」

隊員の人にそう言われ、一平のお母さんに連絡を取った記憶があるが、話しをきちんと伝えられたかは自信がない。

一平、頑張って!
この救急車の中でのことは、ほとんど覚えていない。
ただ、応急処置をされる一平を見守ることしかできなかった。

やっと病院に着いて、治療室へ入る一平を見送る。

「あなたは大丈夫?」

治療室のドアの前で動けない私に優しそうな看護師さんが、タオルとブランケットを持ってきてくれる。

「あ、はい」

私を廊下にある長椅子に座らせ、擦りむいた肘や膝を手当てしてくれる。

「他に痛むところはない?一応診てもらう?」

「いえ、大丈夫です。ありがとうございます、一平は?」

「大丈夫よ、今治療中」

穏やかな口調と、暖かい手に少し心が和む。


「ソウ!」

バタバタと足音を響かせて私のお母さんと一平のお母さんが駆けつけた。
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