アオゾラをカナデヨ
「どうした?まだ具合悪い?」

ボーッとして見えたのだろう、急に顔を覗きこまれる。

「え?ううん、大丈夫だよ」

心臓が、トクンと音を立てる。もう、やめてよ。静まれ、私の心臓。隣にいるのは、ただのトランペットがうまい男子なんだから。

「ならいいけど……さっきのソウのピッコロ、なんかいつもの音と違うなって」

「ん?いや、しばらく吹いてなかったからね」

「そっか」

意外と鋭いんだな、安斉くん。

意外、なんて失礼だな。私の音をちゃんと聞いてくれている証拠じゃないか。

あんな音、聴かれてたなんて恥ずかしい。

それにそんな優しさを不意に見せられたら戸惑ってしまう。特に今日はちょっと心が弱っているのに。

私の心臓はまだ高い音を立てて鳴っているままだ。
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