アオゾラをカナデヨ


次の日の放課後、宣言通り安斉くんは部室にやって来た。

何だか胸がざわついて落ち着かない。安斉くんはいつもと変わらない様子だ。

「莉子〜この問題分かる?」

相変わらず数学に手を焼いていた私はたまらず助けを求める。

「……ああ、これね。私も昨日教えてもらったんだけど」

吹奏楽部は学業に関しても厳しく、あまりいい点数でなかった時には練習を休んで補修をさせられることもある。数学が苦手な私はいつも四苦八苦してしまう。

「なるほど。分かった!ありがとう」

そういえば昨日、香子が安斉くんに数学教えてって言ってたな。得意なのかな、数学。

考えてみたら、私は安斉くんのこと何も知らないな。好きな食べ物も好きな色、得意な教科。
もっともっと話をして、色んな安斉くんを知りたい。こんな風に思うのが、恋なのかな。
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