アオゾラをカナデヨ
「ちょっと〜、余裕だね。ライバルに教えるなんて」

私たちのやり取りを見ていた実梨がからかうように言う。

「いやいや、余裕なんてないよ。一応、先輩としてね」

ほんと、人に教えてる余裕なんてないんだけどな。今は特に、オーディションのことと安斉くんのことでいっぱいいっぱいだ。

「あはは、まあね。相談されたのを無視できないよね」

「そりゃね」

来年は彼女たちがこの吹奏楽部を背負っていくことになるんだから、いい加減なことはできない。

「ちょっと休憩しない?食堂行こうよ」
「うん、行こう行こう」

実梨の誘いを受け、2人で食堂へ向かう。

疲れが出る時期だ。休憩も入れないと煮詰まってしまう。

実梨も競争率の高いクラリネットの中でのプレッシャーはなかなかのものだろうから。

2人並んで部室を出て、1階の食堂へと向かう。
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