アオゾラをカナデヨ
譜面台と楽器を持ち、楽器室へと運ぶために廊下に出る。

「随分しごかれてたな」

そう私たちに声をかけてきたのは安斉くんだ。

「ほんとだよ!なんか恨みでもあんの?もう腕が動かないよ」

麻美は文句を言いながら安斉くんに近寄っていく。

「あはは、お疲れさん。ほら、かしてみ」

笑顔を見せた安斉くんは、麻美と私の譜面台をヒョイと持ち上げ運んでくれる。

「わ、ありがとー!」

自分だって疲れているはずなのに。やっぱり優しいな。

軽々と譜面台を楽器室へとしまい、出てきた安斉くんにもう一度お礼を言うと、そこへ片付け終わった莉子がやってくる。

「ソウ!安斉くんって円谷中学なんだって!」

「え?」

「マーチングの全国大会、一緒に出てたんだよ!」

少し興奮気味の莉子が早口で言う。

ああ、そのことか。
< 96 / 191 >

この作品をシェア

pagetop