君の声がきこえない
 その日の放課後。海斗はひと気のない校舎の裏に来ていた。校舎の少し古びた壁を背に、イジメっ子三人組――福田、西村、栗原に囲まれている。
「今日はいくら持ってきたんだ?」
福田が半ば強引に海斗の鞄を取り上げ、その中から財布だけを乱暴に奪い取る。用無しになった鞄をゴミのように捨てる。
「なんだよ。たったこれだけかよ」
「ご、ごめん。今月はおこづかいが少なくて・・・」
「だったら、親の金パクってこいよ」
「そ、そんなことできないよ」
「できなくてもやるんだよ!」
脅しのような福田の怒号に海斗は肩をビクつかせ、縮こまる。
「いいか?明日は親の金をパクってこい。できなきゃ今度こそどうなるか・・・分かってんだろうな?」
海斗は何も言えずに、ただ俯くことしかできなかった。
不意に福田の拳が海斗の腹にめり込む。痛みと衝撃が海斗の身体中に電気のように走り渡る。一瞬息が止まりそうになり、咳き込んでしまう。
「今日はこれくらいで勘弁してやる。明日持ってこなかったらこんなもんじゃ済まないからな」
吐き捨てるように言い残すと、福田達三人はその場から立ち去っていった。
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