イジワルなカレの愛情表現
他愛ない話をしているふたりにバレないよう、店を出ようと帰る支度をし始めた時。


「呑む前に言っておくけど、お願いだから悪酔いだけはしないでくれよな。そうなると手がつけられなくなるんだから」


「そんなこと言っても、ちゃんと分かっているんだからね。永瀬君は私のこと見捨てないって」


意味深な会話に、動きが止まってしまう。


「あまり冷たいこと言わないでよ。私には永瀬君しかいないんだから」


切なげに放たれた声に、目を見張る。


「分かってるよ。だからこうしてそばにいてやってるだろ?」


――え、山田さん……いま、なんて言った? それに永瀬さんも。


まるで恋人同士のような会話に、心臓が暴れ出す。


ふたりがどんな表情で言っているか分からないけど、こんな会話するってことは、それだけふたりは親密な関係ってことだよね?


衝撃の真実に口元を手で覆ってしまう。

そうでもしないと、声が漏れてしまいそうだ。


じゃあ永瀬さんにとって私ってなに? やっぱりただからかわれていただけなの?
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