イジワルなカレの愛情表現
言われるがまま顔を上げると、眉をハの字にし私を見つめる山口室長と、視線がかち合った。


「もしかして、永瀬と喧嘩でもした?」


責めるわけでも、怒るわけでもなく、山口室長は優しく問いかけてきた。


そうだよね。山口室長も永瀬さんから聞いたのかもしれない。
私と付き合っていると――。


例え永瀬さんが話していなかったとしても、これだけ社内中で噂になってしまっているんだもの。

山口室長の耳に入っていてもおかしくない。


「いえ、そういうわけではなくて……」


これがただの喧嘩ならどれほどよかったか……。

事情を知らない山口室長に真実を告げるわけにもいかず、口籠ってしまう。


失敗したかも。嘘でも「喧嘩した」と言えばよかった。
そうすれば、私情を持ち込んでしまうからとか理由を付けられたのに。

他に担当を下りたい理由なんてある?


返答に困ってしまっていると、山口室長は安心させるように微笑んだ。
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