イジワルなカレの愛情表現
にっこり笑う姿に、すっかりこっちまで伝染してしまい、頬が緩んでいく。


「そんなわがままでしたら、いつでもお付き合いします」


深々と頭を下げると、山口室長は可笑しそうにクスクスと笑い出した。


「それじゃ行こうか。会社近くに美味しい定食屋があるんだ」

「本当ですか? それはぜひ行ってみたいです」


そんな話をしながら会議室を出て、廊下を歩いていると、反対側から開発部の先輩達が向かってきた。
その中には山田さんの姿もあり、忙しなく心臓が動き出す。


やだ、落ち着け自分。
昨夜居酒屋で鉢合わせしたこと、山田さんは気づいていないはず。


なのに動揺していたら、おかしいじゃない。


平静を装い、隣を歩く山口室長の声に耳を傾ける。


「歩いて五分くらいの場所にあるんだ」

「そうなんですね」


徐々に縮まっていく距離。
山田さんはいまだに気づいていない様子で、同僚の人達と談笑しながら歩いている。
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