イジワルなカレの愛情表現
複雑な気持ちを抱えたまま、山口さんと定食屋へ向かうべく、会社を後にした。



それから二日間、永瀬さんは忙しいのか、それとも既に山口室長が記事の担当が変更したことを伝えてくれたからなのか、顔を合わせることはなかった。


「はい、前島さんもよかったらどうぞ」


その日の昼休み終わり間近、外に食べに出ていた西垣さんが帰りに、全員分のシュークリームを買ってきてくれた。


「すみません、ごちそうさまです」

「どういたしまして」


お礼を言いながら受け取ると、上機嫌な声が返ってくる。


あの日からずっとふたりの態度は変わらない。
優しく接してくれるし、仕事を抱え込んでいると声を掛けてくれる。


それというのも、つい一週間前に永瀬さんの計らいで開発部の方たちと、飲み会をしたようで、ふたりが次の日嬉しそうに話してくれた。


おかげで私は今もこうして整った環境で仕事ができているわけだけど……。


西垣さんが買ってきてくれたシュークリームは、記事がサクサクでクリームも濃厚。

美味しすぎてびっくりするくらいなのに、だんだん味が分からなくなってしまう。
< 112 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop