イジワルなカレの愛情表現
ふたりは顔を見合わせ、一度振り返りながらも帰っていった。

パタンとドアが閉まった瞬間、溜息が漏れてしまう。


「手伝ってもらうわけにいかないじゃない。……自分のミスなんだから」


再びパソコンと向かい合い、キーボードを叩いていく。


頼まれていた原稿の締め切りが明日だってことを、すっかり忘れてしまっていたのだ。

幸いページ数は少ないから、あと少しで終わるところ。

失恋しようが仕事だけはしっかりやろうと思っていたのにな。


最近、ミスしてばかりだ。
その原因は自分が一番よく分かっている。


誰もいないオフィスはシンと静まり返っていて、私がキーボードを叩く音が異様に響いているだけ。


「終わった……」


安堵から声が漏れ、そのまま椅子に体重を預けた。
時間を見れば、十九時前。


だいぶ遅くなっちゃったな。


早く帰ろうとデータを保存し、パソコンをシャットダウンさせている間に帰り支度をしていた時、勢いよくオフィスのドアが開かれた。
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