イジワルなカレの愛情表現
ズキンと胸が痛む。
声色は怒りを含んでいて、私を見下ろす眼差しは軽蔑しているように感じたから。


「俺はお前にお願いしたんだ。……なのに途中で仕事を勝手に放棄してんじゃねぇよ」


なに、それ。
確かに仕事に私情を挟んだ私も悪いと思う。
けれどそうさせたのは、永瀬さんじゃない。


沸々と怒りが込み上げてきてしまい、気づいたら口が勝手に動いていた。


「悪いのは、全部永瀬さんじゃないですか」

「――は?」


震える声に永瀬さんは顔を顰めた。


「どういう意味? どうして俺が悪いんだよ」


どこまでシラを切り通すつもりなのだろうか。

でもそっか。永瀬さんは知らないものね。数日前、私があの場所にいたってこと。
ふたりの会話を聞いていたなんて、知らないから強気でいられるんでしょ?


怒りは収まるどころか、膨れ上がる一方だった。


「ちゃんと言えよ、柚香」


その怒りは、腕を掴まれ名前で呼ばれた瞬間、溢れ出てしまった。


「だってそうじゃないですか!」


声を荒げ、掴まれた腕を払い除けると、永瀬さんは驚き目を見開く。
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