イジワルなカレの愛情表現
一度溢れてしまった感情は止められそうにない。


「仕事に私情を挟んでいるのは、永瀬さんの方でしょ!? 私のこと、ただからかっているだけのくせに! 面白かったですか? 永瀬さんの思うがまま反応してしまっていた私が」


「それ、本気で言っているのか?」


永瀬さんの瞳は大きく揺れ、怒りを必死に抑えているのが、ヒシヒシと伝わってくる。

その姿に怯みそうになるも、ここで押し黙るわけにはいかない。


「本気に決まっているじゃないですか! 私、あの場にいたんです。永瀬さんと山田さんがふたりでいた居酒屋に!」

「――え」


一瞬、永瀬さんの顔が強張ったのを見逃さなかった。


やっぱり間違いなくあの日、あの場所に来ていたのは永瀬さんと山田さんだったんだ。
それじゃあの会話の内容も――……。


今でも思い出すだけで胸が痛む。
その痛さを押さえるように唇をギュッと噛みしめた。


「板を挟んで隣の席にいたんです。……なので全部聞いちゃいました。おふたりの会話の内容」


とうとう言ってしまった。

これでもう強気には出られないでしょ? ……さっきと同じこと、言えないでしょ?


「もう全部知っているんで、隠さないで下さい! ……私のことなんて、なんとも思っていないって分かっていますからっ」


悲痛な思いが溢れ出し、ますます胸は痛むばかり。
< 117 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop