イジワルなカレの愛情表現
パニック状態に陥るも、どうにか理性を働かせ両手で胸を押し返した。


「待って下さい! ……永瀬さんは山田さんとその……特別な関係なんですよね?」


背中に腕を回されたまま顔を上げて問いかけると、永瀬さんはあからさまに嫌そうに顔を顰めた。


「勘弁してくれよ、俺があいつと特別な関係とか。吐き気がするんだけど」

「えっ! どうしてですか!? だってお互いそういうこと言っていたじゃないですか!」


そうよ、ちゃんと聞いたんだから。


信じられなくて永瀬さんを睨むように見つめていると、深い溜息を漏らした。


「ったく、本当にあいつは……」


面倒そうに呟いたと思ったら、永瀬さんは私の手を取り歩き出した。


「えっ、ちょっと永瀬さん!?」


急にどうしたの?


驚く私の腕を引き、デスクの上に置いてあったバッグを手にすると、オフィスを出て大股でエントランスへと向かっていく。

その間も永瀬さんはなにも言わず、ただ先を急ぐだけ。
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