イジワルなカレの愛情表現
困り果てる山口室長を尻目に、先ほどの情景が頭によぎる。


そうだよ、どうして私なのだろう。
いきなり困る。永瀬さんの取材とか。


入社して一年。もちろん数回取材をさせてもらっているし、社内報の記事も書いている。

けれど永瀬さんのような話題の人を取材するなんて無理。

経験上はもちろん、ふたりの先輩に自分の仕事をお願いしてやるとか、絶対無理だ。


気づいたら足が勝手に動き出していた。


背後からはいまだに山口室長に抗議するふたりの声が聞こえてくる。


このまま永瀬さんを取材することになったら、あのふたりに何を言われるか……。
それでなくとも、色々とやりづらい日々を送っているというのに！


必死に走り、人気のない廊下でやっと彼の姿を捉えることができた。


足のコンパスが長い彼は、私が走ってやっと追いつけるほど。


「待ってくださいっ！」


階段を使い下に降りようとしている彼を、必死に声を張り上げ呼び止めると、天井が高い廊下に私の声は響き渡り、永瀬さんは足を止めてくれた。


「ちょっと待ってくれませんか!?」
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