イジワルなカレの愛情表現
会社にはまだ人が残っていて、すれ違うたびに視線を感じてしまう。

けれど今はその視線よりも、永瀬さんのことが気になって仕方ない。


どこに行くのか分からないし、どうして私のことを抱きしめたのかも分からない。

それに山田さんとの関係だって、まだちゃんと聞いていない。


それなのに繋がれた手から伝わってくる彼のぬくもりに、嬉しさを隠し切れない。


そして思い知らされる。

やっぱり私、永瀬さんのことが好きだって。
簡単に忘れることなどできないくらい、彼に惹かれているんだ――。


再認識してしまうと、胸がキューッと鳴って締め付けられていく。


どういう意図があってどこに向かっているのか謎だけど、ちゃんと永瀬さんに伝えよう。

陽菜の言う通り、伝えないかぎりなにも始まらないもの。


固く決心した私の手を引き永瀬さんがやってきた場所――。

それは会社近くにある完全個室のカフェだった。


オシャレで落ち着く内装に、料理もおいしいとあって、私も何度か訪れたことがある。

けれど、どうしてここに連れてきたの?


「あの、永瀬さん」

「こっち」
< 120 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop