イジワルなカレの愛情表現
その道中、色々な思いが巡る。


いまだに頭が混乱しているけど、つまり永瀬さんと山田さんは特別な関係じゃないってことだよね? そして山田さんが好きなのは、永瀬さんじゃなくて山口室長?


最寄駅に辿り着き、改札口を抜けるといつも使用していない路線のホームへ進んでいく。


「永瀬さん、どこに行くんですか?」


階段を下りながら問いかけるも、永瀬さんはなにも答えてくれない。

やっと永瀬さんが質問に答えてくれたのは、電車に乗ってからだった。


「さっきの話で、理解できただろ?」


席は埋まっていて、手を繋いだままドア側に寄りかかっていた時だった。
小声で囁いてきたのは。


「あいつ、ずっと山口のことが好きだったんだよ。同期のよしみで俺は協力したり、愚痴を聞いてやったりしていただけ。……誤解は解けた?」


ドキッとしてしまうくらい眩しい笑顔に、頷くことしかできなくなる。


それを確認すると、永瀬さんは安心したように肩を撫で下ろした。


「それにしても酷いよな、俺はずっと柚香一筋だって伝え続けていたっていうのに、全然信用してくれていなかったんだから」

「だってそれはっ……!」

「それはなに?」


すかさず聞いてくる永瀬さんの顔は、からかっているようにしか見えない。
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