イジワルなカレの愛情表現
「いいよ、無理に思い出さなくても。……それだけ柚香は日常的に誰かに尽くしているってことだろうし」

「別にそういうわけでは……」


言葉を濁してしまうと、永瀬さんはの手がそっと私の頬に触れた。


「柚香が覚えていない助けた女の人は、俺の母さんだったんだ」

「えっ! 永瀬さんのですか!?」


驚き声を上げてしまうと、永瀬さんは口元を緩ませた。


「あぁ。田舎から上京してきて、一目俺が勤める本社を見たくて向かっている途中、道に迷ってしまったみたいでさ。……その時助けてくれたのが柚香だったってわけ」


そこまで聞いてやっと半年前の記憶が蘇ってきた。


「思い出しました。覚えていますその日のこと」


地図を片手に困っているのを見て、思わず声を掛けちゃったんだよね。
そうしたら目的地がうちの会社だと聞いて、迷わず案内したんだ。


「名前を聞かれて、しっかりフルネームで名乗ってしまったことも覚えています」

「おかげで俺は柚香の存在を知れたけどな」
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