イジワルなカレの愛情表現
そうだ、会社まで案内して去り際、息子からお礼を言わせたいからってせがまれ、名乗っていた。

けれどまさかあの女性が永瀬さんのお母さんだったなんて――。


「母さん、すっげ感謝していたよ。イマドキ珍しほど親切ないい子だったって。田舎に帰る時、散々お礼を言うように言われてな。でも同じ本社勤務と言っても、社員数半端ないだろ? 見つけるのは無理だと思っていたんだ。なのにあっさり見つかった時は驚いたよ。まさか山口の部下だったとは」


「そうだったんですか」


私の頬に触れたまま、永瀬さんは話を続けた。


「山口から柚香の名前を聞いた時は耳を疑ったよ。それからだ、山口に柚香の話を聞くようになって、社内で見かけるたびに目で追うようになったのは」


愛しそうに私を見つめる瞳に、胸が高鳴る。


「最初は興味本位だった。親切で尽くしすぎる性格だって知ってさ、なんて損している子なんだろうって。……でもお前はいつも一生懸命でさ。いつの間にかなんとかしてやりたいって気持ちが芽生えていた」
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