イジワルなカレの愛情表現
「……なんなのよ、いったい」


彼の背中を見送ったまま、手は自然と乱暴に撫でられた頭へ向かってしまう。


毎朝セットしている髪は彼のせいでボッサボサ。


率直に〝失礼な人〟だと思った。……けれどそれと同時にドキッとさせられてしまった。

初対面なのに私のダメなところを知っていて、しかもなに? 期待しているとか。
意味が分からない。


けれどもっと意味が分からないのは、自分自身だ。


〝期待している〟


社交辞令的な言葉かもしれない。本音なんかじゃない可能性の方が遥かに高い。でも誰かに期待されているって身が引き締まるというか、やる気が漲っていくというか……。


期待に応えたい、なんてことを思ってしまった。


複雑な気持ちを抱えたまま、トボトボと広報室へと戻っていった。



「なによ、全然いい人じゃない! イケメンだし」

事の経緯を話し終えると、陽菜はやや興奮した様子で頬を紅潮させている。

誰だってここまで話を聞いたら、陽菜のように言うと思う。
でもこの話にはまだ続きがあるのだ。
< 16 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop