イジワルなカレの愛情表現
それでなくても、西垣さんと目黒さんに目の敵にされている状況だ。

ここで万が一にでも永瀬さんと付き合うことになった……なんて噂が社内中に広がったりでもしたら……うん、想像もできないほど恐ろしいから、ここで思考をシャットダウンしておこう。


ひとり頷き、追加注文しようとメニュー表を眺めていると、陽菜は頬杖をつきながら、諭すように言ってきた。


「案外運命の人は、身近にいるかもしれないのに。……勿体ない」

「その人が永瀬さんって決まっているわけじゃないでしょ? 憶測だけで言わないで」


ひねくれた言葉を返せば、さすがの陽菜もそれ以上この話題には触れてこなかった。



私はただ、普通に恋愛がしたいだけ。

好きな人には幸せになってもらいたい。好きな人のためになることをしたい。

これって人を好きになったら沸き起こる当たり前な感情じゃないの?


常日頃思うばかりだった。

けれどそのたびに自分に言い聞かせるの。

大丈夫、いつかきっと私の全てを受け入れてくれる運命の相手と巡り会えるって。

もちろんその相手は、絶対に永瀬さんなんかじゃないけど。


追加で甘めのサワーを注文し、陽菜と他愛ない話をすること数時間。
それぞれ早々と帰路に着いた。
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