イジワルなカレの愛情表現
ポンと肩に手を置き、私の足を止めたのは山口室長だった。


「山口室長!」

「人違いだったら恥ずかしいからさ、ごめんね、気安く肩に触れちゃって」


ふわりと笑っただけで、彼の人格が見て取れる。
とにかく山口室長は優しい。気遣いができる人だ。


「いいえ! えっと、おはようございます」


今さらながら挨拶をすれば、山口室長も口の両端を上げて「おはよう」と返してくれた。


そのまま自然とお互い足は会社へと向かっていく。


こうして山口室長と朝、駅でバッタリ会うことは今までにも何度かあった。

路線は違うものの、到着時間が同じらしく、お互い見つけ合った時は駅から徒歩五分の距離を肩を並べていく。


いつもだったら尊敬する山口室長と一緒に通勤できて、朝からついている! なんて思えていたところだけど、昨夜のことを思い出すと非常に気まずい。


私の恥ずかしい恋愛事情を永瀬さんに聞かれてしまったってことは、当然一緒にいた山口室長にも聞かれてしまったはず。


どう思われてしまっただろうか……。
きっと山口室長のことだ。永瀬さんのように笑ったりからかうことなんて、百パーセントしないはず。
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