イジワルなカレの愛情表現
何事もなかったように、接してくれると思う。
でもそれじゃどう思ったのか分からないから、変に勘ぐってしまう。


チラチラと様子を窺ってしまっていると、隣を歩く山口室長は前を見据えたままポツリと声を漏らした。


「昨夜はごめんね。友達と会っているところを邪魔しちゃって」

「え、あっ、いいえ! そんな」


それよりも山口室長は私に謝るようなことなんて、なにひとつしていないじゃない。
むしろ謝ってほしいのは永瀬さんの方だ。


昨夜のことを思い出すとイラッとしてしまう。
それを感じ取ったのか、山口室長は「ごめんね」と再度謝ってきた。


「永瀬、根はいい奴なんだ。分かりづらいけどね」

「はぁ……」


曖昧な返事をするしかできないけど……でも、否定はできない。


「それと急に永瀬が前島さんを指名した原因は、俺のせいだから」

「えっ! どうしてですか?」


意味が分からず首を傾げてしまう。
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