イジワルなカレの愛情表現
広報部の中で花形と言えば、もちろん第一広報室だ。

仕事のスキルはもちろん、海外のクライアントとのコンタクトを取ることが多いため、外国語が堪能でなくてはならない。

そんな第一広報室で、山田さんは一際目を引く存在だった。

女性ながら主任という立場で、仕事もデキるし、気取らない性格でサバサバしており、彼女を嫌う人なんていないと聞いたことがある。おまけに美人だし。


同じ広報部と言っても仕事内容が違えば、挨拶を交わす程度で話す機会もない。


現に私の存在なんて、永瀬さんの件がなかったらきっと知られていなかっただろう。


けれど私は山田さんのこと、広報部に配属されてからずっと知っていた。

同じ女性として憧れを抱いていたし、山田さんのように仕事がデキる女になりたいとさえ思っていたから。


それなのに……な。憧れの人に嫌われてしまった。
あの鋭い眼差しは間違いなく私に向けられていたもの。


そう思うとやるせなくなる。


仕事はきちんとこなしたい。山口室長の期待にも応えたい。……永瀬さんだって山口室長の言う通り、根は悪い人ではなさそうだし。
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