イジワルなカレの愛情表現
「なんでしょうか? わざわざこちらまで足を運んでいただいた用件は」


笑顔を貼り付けて問いかけると、永瀬さんは一歩、また一歩と私との距離を縮めてきた。
ただそれだけのことで、無意識に身構えてしまう。


するとますます永瀬さんの口角は上がるばかり。


えっ、なっ、なんなの本当に! もしかして昨日のことをからかいにきたとか?
いやいや、そのためだけにここまで来ることは考えられない。じゃあ一体なに?

インタビューに関しては、予定が決まり次第こちらから連絡することになってるし。


思いを巡らせていると、あっという間に永瀬さんは目の前で止まり、私を見下ろしたまま、耳を疑うことを言い出した。


「この後、飲みにいかないか?」

「…………はい?」


思いもよらぬ誘いに、大きな声が出てしまった。
それでも永瀬さんは表情を変えることなく、同じことを繰り返した。


「だから一緒に飲みに行こうって言ってるんだよ」


先ほどよりはっきりと大きな声で言われ、冗談ではないのだと認識はできた。

けど、待って。
どうして急に? 私と永瀬さんは気軽に飲みに行くような関係ではないですよね?
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