イジワルなカレの愛情表現
「じゃあこんな雑用、さっさと片付けるぞ」

人のこと散々ドキドキさせておいて、当の本人は何事もなかったように資料を束ねて、次々とホチキスで留めていく。


永瀬さんが考えていることが、全然分からない。

そもそもどうして私を指名してきたのだろうか。どうして私の性格を知っているの? ……どうして一緒に飲みに行こうと誘ってきたり、こうして仕事を手伝ってくれているの?


開発部の彼と広報部の私には、なんの接点もなかった。
まともに話したのは、つい最近なのに――。


山口室長から私の話しを聞いていたとしても、ここまでしてくれるのはなぜ?

ホチキスを留める音だけがオフィスに響く中、グルグルとその答えを考えてばかりだった。




「あ~うまい!! やっぱ仕事終わりのビールは最高だなっ!」

ジョッキに注がれていたビールを一気に飲み干し、上機嫌で声を弾ませる永瀬さんを目の前に、私はいまだにビールを一口も飲める状況ではない。


「なんだよ、せっかく手伝って早く終わりにしてやったというのに、辛気臭い顔しやがって」

不服そうに眉を顰める彼に、イラッときてしまう。


「そりゃこんな顔にもなりますよ。……明日のことを考えたら」

「明日のことって、アレか?」

「もちろんアレです!」
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