イジワルなカレの愛情表現
お互い口にしている〝アレ〟
それは作り終えた資料の束を、目黒さんのデスクに置きに行ったときのことだった。


* * *


「これも一緒に」

「――え?」


そっと資料の束の上に置かれた一枚のメモ。

「少しはこれで懲りるだろ」


そう言いながらニヤリと笑う彼の姿に、嫌な予感がよぎる。

恐る恐る永瀬さんが置いたメモを見ると、そこにはこう書かれていた。


〝仕事を押しつけてくれてありがとう。おかげで前島さんと有意義な時間を過ごせたよ。〟と。

もちろん最後にはフルネームで〝永瀬 優〟と書かれている。


「ちょっ、ちょっとこれはマズイですよ!」


ギョッとしてしまい、慌ててメモを手に取ろうとした瞬間、横から伸びてきた長い腕がそれを制止する。


「まずくねぇよ。これくらいやってやれ。お前も少しは気が晴れるだろ?」

「なっ……! 晴れるわけないじゃないですか!!」


掴まれている腕を振り払おうとするも、永瀬さんに思いの外がっちり掴まれてしまっていて、それは叶わなかった。
< 41 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop