イジワルなカレの愛情表現
「小心者だな。別にお前がやったわけじゃねぇんだからいいだろ?」

「よくありません! ……永瀬さんは女の恐ろしさを知らないんです」


私の腕を掴む永瀬さんの腕を見つめてしまう。


そうよ、男の永瀬さんは知らないんだ。女の恐ろしさを。
昔からそうだ。いじめも男より女の方が陰湿だったし、肉体的ではなく精神的ダメージを与えられる。


それは大人になっても同じだ。いや、むしろ大人になればなるほど、精神的ダメージを与えられるかもしれない。
学校から職場に場所を変えて。


「お願いですから、こういうのやめてください」


悲願するように声を絞り出し、掴まれた腕を伝い視線を上げていくと、目を見開き驚く永瀬さんと視線がかち合う。

けれどそれは一瞬で、強い眼差しで私を見つめてきた。


「それを言ったら、女は男を軽く重んじている。……知ってるよ、女の恐ろしさくらい。だからコレを書いたんだよ」


永瀬さんは私の話をちゃんと聞いていたのだろうか。
知っているから書いた、なんて意味が分からない。
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