イジワルなカレの愛情表現
なのに永瀬さんは表情を変えることなく、静かに言い放った。


「お前ひとりくらい、守ってやるよ」


予想外の言葉に、息が詰まる。


なに……それ。


「だからお前は、自力で殻をつき破れ。……でないといつまで経っても、今の状況から抜け出せないぞ」


永瀬さんの声が、鋭い刃と化して胸に突き刺さっていく。


この前もそうだけど、言われなくたってこのままではいけないこと、私が一番分かっている。
どうして永瀬さんは、こんなこと言ってくれるの?


昨夜はからかってきたくせに。
それに私を助けたって、永瀬さんには何も得しないじゃない。


ますます永瀬さんの真意が読めない。


それを感じ取られたのか、永瀬さんは途端に表情を緩めた。


「理解したら、さっさと行くぞ。呑む時間が減るだろ」

「――え、いや、ちょっと待って下さい!」


理解できてないから! そっ、それよりもこのメモを処理しておかないと、明日大変なことになってしまう!
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