イジワルなカレの愛情表現
それは会社を出て、居酒屋に辿り着くまでずっとだった。……そう、ずっと腕を掴まれたままだったのだ。


＊　＊　＊


「明日の目黒さんの態度も怖いですし、なにより永瀬さんに腕を掴まれて歩いていたところを、沢山の社員に見られちゃったんです。……おかげで私、明日からもう会社で生きていけないじゃないですか」


ボソボソと文句を言い並べると、永瀬さんは深い溜息を漏らした。


「オーバーなやつだな、お前」

「っオーバーじゃありませんから！」


すかさず言い返すも、永瀬さんは我関せず状態で、つまみの漬物に箸を伸ばしている。


「明日のことは明日考えればいいだろ？　それにこれがきっかけで、お前は自分の殻を破れるかもしれないじゃん」

「……そんなこと絶対ありませんけどね」


ますます殻の厚みが増してしまいそうだ。
社内中を女性社員を、敵に回してしまったかもしれないのだから。
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