イジワルなカレの愛情表現
「男なら有名な企業に入社して親を喜ばせたいって思うものだろ? その理由じゃ納得できない?」

「……いいえ」


永瀬さんが嘘を言っているようには見えない。
じゃあ本当なのかな? うちの会社に入ろうと思った理由。


もっと違う答えを予想していたから、ちょっと拍子抜けしてしまった。おまけに私と同じ理由なんだもの。


「さっきは笑っちまったけどさ、意外と同じ理由で入社してきた奴なんて、結構いると思うぞ。〝誰かのために〟って思う感情は当たり前なものだし、相手のために尽くすことができるって、俺は長所だと思う」


手帳にメモっていた手が止まってしまう。


なにそれ、散々人のことをバカにしてきたくせに、いまさらそんなこと言うなんて――。


顔を上げれば、永瀬さんは愛しそうに私を見つめている。


「……っそれは、ありがとう、ございます」


その顔。反則。

テンパりすぎて意味もなくお礼言っちゃったじゃない。


「どういたしまして?」

クスクスと笑われてしまい、ますます動揺させられていく。
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