イジワルなカレの愛情表現
永瀬さんは私のことをからかっているだけ。

こうやって動揺していたら、永瀬さんの思うつぼ。

そう分かっているのに平静を保てないのは、演技とは思えないほど永瀬さんが私を見る目が優しいから。


勘違いしそうになる。
本心で言ってくれているんじゃないかって。……もしかして永瀬さんは私に好意を抱いてくれているんじゃないかって。


そんなことあるわけないのに。


そもそも私のどこに惹かれたっていうのよ。取り柄といえば重いくらい尽くすことくらいだ。

容姿だって中の下くらいだし。山田さんのようにバリバリ仕事ができるわけではない。

短所を並べていくと、少しずつ平静を取り戻してきた。


インタビューが終わっちゃえば、ほとんど会うことはない。

写真を撮って記事の確認をしてもらうくらいだもの。
とにかく早く質問しちゃって帰ろう。


甘い視線から逃れるように再び手帳に書き記した質問を見ようとした時、前から伸びてきた手が手張を奪っていく。


「あっ」

声が漏れてしまい手帳を目で追いかけていくと、再び永瀬さんと視線がかち合ってしまう。
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