イジワルなカレの愛情表現
♯5【キスして初めて気づく?自分の気持ち】
『ご乗車、ありがとうございました』


いつもの時間に辿り着いた最寄り駅。

人の波に流されながら、一歩ずつ会社に近付いているのかと思うと、気が滅入るばかりだった。


おまけに昨夜はほとんど眠れなかった。

もちろんその理由は永瀬さんのせいだ。


冗談か本気か分からない彼の言動に、帰宅後も考えさせられてしまっていた。

あの後も永瀬さんが私を見る目は変わらなくて、翻弄されっぱなしだった。
結局質問さえもさせてもらえなかったし。


昨夜は奢ってもらってしまい、断ったのに電車で最寄り駅まで送ってもらってしまった。

ますます永瀬さんの真意に困惑するばかり。


帰り際、「また誘うから」と言って、居酒屋の時とは違い優しい手つきで私の頭を撫で、帰っていった。


また誘うからってなに? そもそもどうして永瀬さんは私を誘うわけ? いくら仕事が忙しいって言っても、昼休みとかちょっとした時間があれば、インタビューはできるのに。

わざわざ仕事終わりに会うことないじゃない。しかもふたりっきりで。


こんなことを考えてばかりで目が冴えてしまい、眠れなかったのだ。

けれど今は永瀬さんのことを考えている場合じゃない。
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