イジワルなカレの愛情表現
素直にふたりの言葉を鵜呑みにすることはできない。

今までが今までだったし、なにより手のひらを返したような態度の急変は一体なに?


呆然したまま、ふたりがデスクに戻っていく姿を見送ってしまう。

するとすかさず木村さんが駆け寄ってきて、ふたりに聞こえないよう小声で耳打ちしてきた。


「どうしたんだ? あのふたりは。前島ちゃん、とうとう耐え切れなくて、毒でも盛ったりしたの?」

「そんなわけないじゃないですか」


失礼な! けど、木村さんがそう言いたくなる気持ちも分かる。

毒でも盛られたとしか思えないくらい、ふたりの態度が違い過ぎるのだから。


「これがずっと続けば、我が社内広報室も平和なんだけどね」


「どうなることやら」と呟きながら、木村さんは自分のデスクへと戻っていった。


木村さんの言う通りだ。

これがずっと続けばいいんだけど……そううまくいくわけないでしょ?


仮にも一年間もの間、ふたりと仕事をしてきた身として安易に想像できる。
今の状況は一過性のものだって。

なにがどうなっていきなり態度を変えたのかは謎だけど、ひとまず良かったのかな?
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