イジワルなカレの愛情表現
「好きって感情は、突然くるもんじゃねぇの?」

「そんな……」


そういう人もいるのかもしれない。けれど私は違う。

好きになるってもっと相手のことを知ってからだと思う。

雰囲気とか仕草とか、その人の性格とか。一緒に過ごして、話してみないと分からないと思うから。


「私は……違います」


否定の言葉を口にすると、永瀬さんの瞳は大きく揺れ、私の手を握る力を強めた。


「嘘つけ。……俺にドキドキしているくせに」

「……っ!」


一瞬にして顔が熱くなっていく。


やっぱりバレバレだったんだ。

動揺していることも、永瀬さんの言動にドキドキしちゃっていることも。


確信めいた目で見つめられてしまい、いよいよ返す言葉が見つからない。

けれどそれは裏を返せば、認めてしまっているということ。


コツンと響く、革靴の音。

距離が縮まったことに気づいたのは、微かに鼻を掠めたアクアマリンの爽やかな香り。
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